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ウォシュレットの元となったフランス発の「ビデ」の歴史


TOTOのウォシュレットは今や日本の家庭では一般的なものですが、フランスの「ビデ」を発祥としています。フランスのビデはアメリカに伝わったものの人気が出ず、アメリカから日本に伝わることで大きく広まったわけですが、なぜこのような歴史をたどったのか、Maria Teresa Hart氏が記しています。

Why Don't Americans Use Bidets? - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/technology/archive/2018/03/the-bidets-revival/555770/

ヨーロッパの宿に宿泊した際に、バスルームで「便器が2つある……」と戸惑ったことがある人もいるはず。「ビデ」と呼ばれるこれは、足を含めた下半身を洗浄するための器具となっています。


ビデが生まれたのは1600年代のフランスで、当時は寝室用便器の後に使うアイテムとして、ベッドルームやドレス室に保管されていました。初期のビデは4本足の木製の洗面器のような形で、装飾がほどこされたオットマンのような見た目だったとのこと。洗面台のフタも木製で、座る部分にはしばしばレザーが使われたそうです。

「ビデ」という名前は、フランス語の「ポニー」に由来してます。これは、ビデにまたがる様子が馬にまたがっている時のようだったという理由もありますが、乗馬した後の貴族がよくビデを使ったことが理由とも言われています。当時、水を運ぶという作業は非常に骨の折れるものでしたが、上流階級の人々は定期的にビデを使って下半身を洗っていたそうです。

ルイ=レオポルド・ボワイーの絵画では、当時のビデを使う女性の様子が描かれています。マリー・アントワネットは幽閉生活を送った後にギロチン処刑されましたが、幽閉されている時でもビデの使用を許されていたといいます。


17世紀になると、水を送り出すためのハンドルがついたビデが使用されるようになり、18世紀には、ベッドルームに置かれていたビデがバスルームへと移動するようになりました。この時に、現代で使われている「片側に蛇口がついた小さなおけ」という形のビデが誕生しました。そして、当初はフランスの上流階級でのみ使われていたビデですが、次第に他の階級の人々や、西ヨーロッパの国々、ラテンアメリカ、中東へと広まっていきます。

ところが、アメリカでビデはあまり使用されませんでした。これは、アメリカ人が初めてビデを目にした時の状況が関係しているとのこと。アメリカの人々がビデを最初に見たのは第二次世界大戦中で、ヨーロッパに滞在している兵士たちが売春宿を訪れた時に、売春婦がビデを使っているのを見たのが最初だったそうです。ビデと性労働が結びつけられてしまったことから、兵士たちが国に戻った後でも、アメリカではあまりビデが広まらなかったとみられています。

また、第二次世界大戦以前から、膣洗浄が避妊の方法として考えられてきたこともビデと性行為あるいはスキャンダルを結びつけることにつながったといいます。当時の医師であるNorman Haire氏は「ビデの登場は罪の象徴である」と述べたほどです。これに加えて、まだ月経が「汚れ」と捉えられている時代であったため、ビデは「女性のセクシュアリティ」「望まない妊娠」「月経」という3つを想起させるものとして避けられる傾向にありました。

by Tofros.com

1964年、ビデを便器と組み合わせ、スプレー機能を使うことで、もっといいイメージを作り出そうと考えたのがAmerican Bidet Companyです。もともと、American Bidet Companyの創業者であるArnold Cohen氏は「ビデを使った洗浄は発疹や痔、炎症の治療に役立つ」という研究結果を見て、父親のために装置を開発しました。「トイレットペーパーを使う」という習慣を変えようと考えていたCohen氏は、Sitzbathというビデをトイレに取り付けることを提案しましたが、「宣伝はほぼ不可能な課題だった」とのこと。

しかし、Cohen氏のメッセージに耳を傾けた人がいました。日本のニチメンの代表はCohen氏と面会し、最終的に独自デザインのSitzbathを作り上げます。そして1980年代にはTOTOがビデとトイレのハイブリッドとなる「ウォシュレット」を考案し、ウォシュレットは日本の家庭へと受け入れられていくことに。「テクノロジー」と「清潔さ」から生み出されたウォシュレットは、ビデの未来を切り開き、Cohen氏のSitzbathはウォシュレットの父となりました。ただし、アメリカに輸入されたTOTOのウォシュレット付トイレは最もベーシックなモデルが499ドル(約5万6000円)と比較的高価で、Google本社に導入された時には「宇宙トイレ」と呼ばれたとのこと。ウォシュレット付きのトイレは社会におけるトップクラスの象徴のようなものであり、「ウォシュレットがビデを再び上流階級のものにした」とTeresa Hart氏は記しています。

by WikiImages

一方、アメリカではトイレに流せるタイプの「ウェットワイプ」が人気となりました。ウェットワイプは赤ちゃんのお尻ふき的なアイテムで、ビデに置き換わるもの。もともとトイレットペーパーの代わりに考案されたものでしたが、現代ではバーベキューの際の手ふき代わりにも使われています。22億ドル(約2480億ドル)もの産業に成長したウェットワイプは、ビデの「女性が使うもの」という印象に対し、「Bro Wipes」「Dude Wipes」という名で男性に対して性行為の前のリフレッシュを提案するものもあります。

ただし、ウェットワイプはトイレに流されると他の脂肪を含むものと合わさって肥大化し、下水道システムにダメージを与えるという欠点があります。この修理費は膨大で、ロンドンでは1つのダメージを修復するのに約6700万円を必要としたケースもあるとのこと。このため、「流すことができる」といううたい文句をめぐって訴訟が起こり、2015年5月には特定の製品から「流すことができる」という文言が取り除かれました。


そして新たに、既存のトイレにウォシュレット機能を加えることができる着脱可能な「Tushy」というアイテムも登場しています。Tushyは69ドル(約7000円)と安価なのもポイントです。Cohen氏がSitzbathを何とか売りだそうとした時と状況が大きく変わっているため、Tushyは「性行為を想起させる」というイメージと戦うことなく、シンプルに「うんちした人のために」というメッセージが打ち出されているとのことです。

Bidet Attachments by TUSHY | For People Who Poop
https://hellotushy.com/

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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